悲しみは理由を求めている/ただのみきや
 
透けて覚束ない雪のよう
二人の心は頼りなく
重さの推し量れない
透明な立方体の前で
無力な場違いな生き物だった

 *

にわかに想いは泡立って
そう 泡になって消えた
残ったものは
気の抜けた記憶 空ろな心
後を引く苦味

 *

プランクトンのように白く
刻々と時は死に堆積する
わたしの瞳
夜より暗い洞窟から
さやさやと揺れる
柳に影はどこにもなく
冬の日差しが纏わって
デコイへと変わり果てた
鳥たちの沈黙は
地面で羽根を折り
見交わす瞳を求めたが
人さし指の背が割れて
痛みの羽化が始まると
迸る血の愛おしさ
狂ったように逆流して

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