詩の日めくり 二〇一四年十月一日─三十一日/田中宏輔
 

そのみにくい卵があることに気がつかなかった
みにくい卵の子は
かえらずに
くさっちゃった

二〇一四年十月三日 「雲」

さいきん、よく空を見上げます。
雲のかたちを覚えていられないのに、
形を見て、うつくしいと思ってしまいます。
覚えていることができるものだけが、
美しいのではないのですね。
恋人たちの表情にも
きっと憶えていないもので
とてもすてきなものが
それはもう、いっぱい、いっぱい
あったのでしょうね。

二〇一四年十月四日 「田ごとのぼく」

たしかに
田んぼ
一つ一つが
月を映していた。
歩きながら
とき
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