詩の日めくり 二〇一四年十月一日─三十一日/田中宏輔
ときどき月を見上げながら
学校から遅く帰ったとき
月も田んぼの水面で
少し移動して
でも
つぎの田んぼのそばに行くと
すでにつぎの田んぼに移動していて
ああ
田ごとの月って
このことかって思った。
けれど
ぼくの姿だって
ぼくが移動すれば
つぎつぎ違う田んぼに映ってるんだから
ぼくだって
田ごとのぼくだろう。
ぼくが
田んぼから月ほどにも遠くいる必要はないんだね。
月ほどに遠く
月のそばにいると
月といっしょに
田んぼに光を投げかけているのかもしれない。
ぼくも月のように
光り輝いてるはずだから。
違う
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