コトバ、無音の 夜に打つ/ひだかたけし
 
名指され得ぬモノ
今刻々と
降っている降っている

 *

獣の声、
響いていた
死者の声、
響いていた
師走も遂に走り出し
怒涛の静けさ霊園墓地に
ほのかやわらか木霊した、
死者よ獣よ
宇宙の声よ
意味と響きの未分化の
オマエをわたしはワケもわからず
涙流して抱き締めた
沈黙の底を掬いながら
必死ヒシと抱き締めた

声とはいったいなんだろう?
愛しい人人人の声
喉を震わせ剥き出し露わ
裸の現れ耳朶に触れ
もうアッサリと消えていく
(何年何十年寝起き共にし
そのたび抱き締め蹴飛ばした
声声声声
声声よ!
白鷺の冷たく澄んだ水面を過るが如く
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