スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
着くと先輩の男から殴られた。たった十五秒の遅刻だ。
「俺たちには遅刻が許されないと何度言ったらわかる?上の民さんらのために早急に雪を溶かさないといけねぇんだよ。いい加減にしろ!」
さらに殴られる。この話は何度もされているからだ。
「母の熱が治らなくて。」
今日のナディエはいつもにも増して薄着だった。普段のナディエは上の民が塔の底に捨てる布から創り上げたつぎはぎのコートを身に纏っている。次にほつれにほつれたシャツ、ソルディモの友人に譲られた燃えて穴だらけのズボンを着ていた。「またか。殴って悪かったな。お前も可哀想にな。かーちゃんの身体が弱いってだけでこの扱いだもんなぁ。」
「母さんの悪口は
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