スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 
口は言うな!」
ナディエはただでさえ、神経質な性格であったが特に母の具合が悪くなってからはもっと鋭い眼光で人を睨みつけるように、餌を狙う鷹のように生きるようになった。
「はいはい、お前にも父親が居たら多分上の民として生きれたんだろうなぁ。」
ナディエは本来、上の民でも上級と言われる貴族の身分であった。だが、父親に側室のような状態にあった母が子供を産み、身体を壊した途端に即座に都市フルギスの底、ソルディモの街に降ろされることになったのだ。母は生まれて間もない赤ん坊を抱えて泣きながら、電籠に乗った。電籠というのは電気で動く牢屋のような籠のことである。
「私は本当に『下』に行かないとならないの
[次のページ]
戻る   Point(0)