スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 

「だろう、だろう。」
薄く黄金色に光るスープには緑色の野菜、橙色の根菜が入っていた。
「これは人参というものでしょうか。」
「そうなのかい?」
「事典で見たことがあります。」
「ナディエは頭が良いねぇ。」
「確か、この野菜は栄養的に母の病に効くと思います。夜目に効くと聞いたことがあります。」
そう言うと自分はスープをほんの少し食べて、残りは全て母に食べさせた。
「母さん、口を開けて。」
母はゆっくりと口を開ける。ほとんど話せなくともきちんと人の言葉は聞こえるのだ。
カリムはこの様子を見て泣きそうになった。もっと自分が世話してやれたらいいのに、と。カリム自身も頭は悪い方では
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