スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
ではない。栄養という単語を知るソルディモなどほとんど居ないのだ。カリムがきちんと教育を受けられたのはソルディモの中でも比較的裕福であり、最低限の教育だけではなく、知識人のコミュニティがあったために様々な人から生きるための知恵を教わったのである。知識人のコミュニティの人々は今は老衰で亡くなったか、生きていてもほとんど動けなずにましてや話すことすら困難な状態である。だから、ソルディモの教育水準は下がっているのだ。みんな働くことに必死になって、学ぶことを、生きる希望を、忘れた。ただ、その結果である。
いつまで人は雪を運び、融かし続けるのか。
ソルディモが絶滅するまでか、それともソルディモが居なくなったら上の民が降りてくるのか。それは誰にもわからない事柄であったし、そんなことを考える余裕すらなかった。助けを求める暇があるなら、自分で動くしかない。そうでなければ死ぬのみ。それがソルディモにとっての掟であり、矜持であった。また、今日もガラガラと電籠が降りてくる音が聞こえる。
戻る 編 削 Point(0)