詩の日めくり 二〇一四年九月一日─三十一日/田中宏輔
動きます。ふだんはじっとしてます。」
「じっとしているのに、獰猛なんですか?」
「ひらめも、そうですよ。ふだんは底にじっとしてます。」
「どんな味でしたか?」
「白身のあっさりした味でした。」
「ああ、動かないから白身なんですね。」
「そうですよ。」
話の途中で、柴田さんが立ち上がって、こちらに寄ってこられて、ぼくの肩に触れられて、
「一杯、いかがです?」
「はい?」
と言って顔を見上げると、陽気な感じの笑顔でニコニコなさっていて
「この人、なんべんか見てて、おとなしい人やと思ってたんやけど、この人に一杯、あげて。」と、マスターとバイトの女の子に。
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