詩の日めくり 二〇一四年九月一日─三十一日/田中宏輔
しまった。えいちゃんは、ぜんぜん内緒話ができない人で、たとえば、ぼくのすぐ横にいる客のことなんかも、「あ〜、もう、うっとしい。はよ帰れ。」とか平気でふつうの声で言うひとで、まあ、だから、ぼくは、えいちゃんのことが大好きなのだけれど、ぜったい柴田さんにも聞こえていたと思う、笑。ぼくはカウンター席の奥の端に坐っていたのだけれど、しばらくして、八雲さんという雑誌記者のひとが入ってきて、入口近くのカウンター席に坐った。以前にも何度か話をしたことがあって、腕とか、とくに鼻のさきあたりが強く日に焼けていたので、
「焼けてますね。」
と声をかけると、
「四国に行ってました。ずっとバイクで動いてましたか
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