詩の日めくり 二〇一四年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
田くんの美しさに打ち震えている

一人なのに二人である
あらゆる人間が
一人なのに二人である

湖面が分裂するたびに
吉田くんの数が増殖していく

二人から四人に
四人から八人に
八人から十六人に

吉田くんは
湖面に映った自分と瓜二つの吉田くんに見とれて
動けなくなっている

無数の湖面が
吉田くんの美しさに打ち震えている

どの湖の上にも
吉田くんが
一人、宙に浮かんでいる

二〇一四年九月十六日 「戴卵式」

12才になったら
大人の仲間入りだ
頭に卵の殻をかぶせられる
黄身が世の歌を歌わされる
それからの一生を
卵黄さ
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