詩の日めくり 二〇一四年九月一日─三十一日/田中宏輔
ルを憎む憎しみより強かったからである。そのため人間の世界では、文明が発達することもなく、文化が起こることもなかった。人間には、音楽も詩も演劇もなかった。ただ祈りと農耕と狩猟の生活が、人間の生活のすべてであった。
二〇一四年九月八日 「存在の卵」
二本の手が突き出している
その二本の手のなかには
ひとつずつ卵があって
手の甲を上にして
手をひらけば
卵は落ちるはずであった
もしも手をひらいても
卵が落ちなければ
手はひらかれなかったのだし
二本の手も突き出されなかったのだ
二〇一四年九月九日 「生と死」
みんな死ぬために生きていると思ってい
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