誰にでも自分の中にはもう一人の自分がいる/こたきひろし
せいだろう、よくいじめられていた。
だから他所の子供らの騒ぎ声に過敏に反応してしまい家から外に出られなかった。
だけど、そこに母親の声が加わる事によって僅かながら勇気が湧いた。他所の子供らに見つからないように盗むみたいに見るならいいだろうと思った。
家の物陰に隠れて見ようとしたら母親に気づかれてしまった。
母親は慌てて駆け寄って来ると、その荒れた両手で私の両の目をいきなりふさいだ。
ひろしお前は見るな!
強く叱かりつけるみたいに制止した。瞬間、好奇心に反抗心が加わって
なんでよみんな見てるじゃないか!
普段は従順な自分の裏側に湧き上がる感情に突き上げられて、私は母親の手
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