命焔屋 〜蝋燭の焔の魂〜(短編小説)/月夜乃海花
 
赤かった。子犬は「きゅいん」と微かな声を上げた。
ああ、そんな。命は簡単に消える。
まるで蝋燭の焔のように。

目覚めると、小さな部屋のベッドにいた。
隣には子犬がすやすやと眠っている。
部屋は本棚で囲まれており、まるでファンタジーの世界にいるようなアンティークさで、もう少ししたら魔女でも現れるのではないかという不気味さがあった。しかし、それと共に何処か暖かい安心感があった。
「目が覚めたかの?」
顔を少し右にずらすとまるでサンタクロースの様なのほほんとした老人がいた。
「あの、貴方は?」
じっと数秒ほど続く無言。
「きゅうん」
子犬は老人に向かって鳴くとお腹を出し、尻尾を
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