返り討ちに合った復讐者/ただのみきや
 
心臓へ
一粒の冷たい雨

  *

蒼白いゆめのはなびら雨にぬれ
石の上 におうように張り付いた

文字なら滲んでしまうでしょう
舌から上る煙なら
すっかり透けもするでしょう

あるがままにこぼれて落ちて
あわいあわいに豊満な 窒息





こころを捕まえて

こころを捕まえてください
朝露に濡れそぼつ痛々しい無邪気さで
内側に棘を育てる蕾のように
誰にも知られず苛まれ
硝子のように取り返しのつかない
美しい沈黙をまき散らした
あのこころを
油を塗った毬のように優しい手つきを逃れ
飼い馴らされず野性にもなれず
今もパズルのように
[次のページ]
戻る   Point(5)