『終わらない黄昏』掌編/道草次郎
菌状の無意識蓋然外殻物が三つの満月が直列になると一斉に空無に飛翔する巨大ガス惑星などの偉観に比べると、この惑星はなんと平凡な事だろう。見たところ摩耗した石灰岩と酸化鉄の煙をあげる小さな湾の如き海しかないようだ。射手座のXm23alphaに存する遊離水素と結合した火炎の如き核爆縮層海の方がまだ見栄えがする。
断っておくが、我々にはサンプルは要らない。なぜなら先にも言った通り我々は彼らであり、彼らが我々であるから。ともすれば彼の会話はすべて筒抜けである。亀の子のように緩慢な電子の糸にアクセスするまでもなく、この肚に落ちてくるのだ。例えば、こんな会話があった。
「モニカ。ぼくのアパートにおい
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