詩の日めくり 二〇一四年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
のだけれど、日常的には、そのへんにころころころがっている話ではある。で、逆もまた真であるとする場合があるとすると、「誰をも褒めない者は、誰をも褒めている。」ということになる。さて、つぎの二つの文章を読み比べてみよう。「どれにも意味があるので、どこにも意味がない。」「どこにも意味がないので、どれにも意味がある。」塾からの帰り道、こんなことを考えながら歩いていた。ぼくに狂ったところがまったくないとしたら、ぼくは狂っている。ぼくが狂っているとしたら、ぼくには狂ったところがまったくない。じっさいには、少し狂ったところがあるので、ぼくは狂ってはいない。ぼくは狂ってはいないので、少し狂ったところがある。「おれ
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