詩の日めくり 二〇一四年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
でありませう。」(川端康成『美しい日本の私』)「断片だけがわたしの信頼する唯一の形式。」(ドナルド・バーセルミ『月が見えるだろう?』邦高忠二訳)「首尾一貫など、偉大な魂にはまったくかかわりのないことだ。」(エマソン『自己信頼』酒本雅之訳)「読書の楽しさは不確定性にある──まだ読んでいない部分でなにが起きるかわからないということだ。」(ジェイムズ・P・ホーガン『ミクロ・パーク』26、内田昌之訳)。

二〇一四年八月二十三日 「通夜」

 よい父は、死んだ父だけだ。これが最初の言葉であった。父の死に顔に触れ、ぼくの指が読んだ、死んだ父の最初の言葉であった。息を引き取ってしばらくすると、顔面に点
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