詩の日めくり 二〇一四年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
、いいことの一つだ。思弁だけではなく、経験を通しても多面的に見れる場面が多々ある。ぼくたちが、時間を所有しているのではない。ぼくたちのなかに、時間が存在するのではない。時間が、ぼくたちを所有しているのだ。時間のなかに、ぼくたちが存在しているのだ。まるでぼくたちは、連続する実数のなかに存在する有理数のようなものなのだろう。実数とは有理数と無理数からなる、とする数概念だが、この比喩のなかでおもしろいのは、では、実数のなかで無理数に相当するものはなにか、という点だ。それは、ぼくたちではないものだ。ぼくたちではないものを時間は所有しているのだ。ぼくたちでないものが、時間のなかに存在しているのだ。しかし、も
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