詩の日めくり 二〇一四年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
言葉となる。言葉を借りて使うと負の利息がつく。預けていた言葉が減少し、預けていた言葉がなくなると、覚えていた言葉が忘れられていく。

二〇一四年八月十四日 「くるりんと」

卵に蝶がとまって
ひらひら翅を動かしていると
くるりんと一回転した。
少女がそれを手にとって
頭につけて、くるりんと一回転した。
すると地球も、くるりんと一回転した。

二〇一四年八月十五日 「卵」

波はひくたびに
白い泡の代わりに
白い卵を波打ち際においていく

波打ち際に
びっしりと立ち並んだ
白い卵たち

二〇一四年八月十六日 「10億人のぼく。」

 
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