無花果の木に無花果の実がなる頃に/こたきひろし
宅の水車を回しこうばの機械を動かしていた
分家の前の堀の土手には下へおりる道があって母親はよく水を使って農具や野菜を洗っていた
そして
土手には私の好きな柿でも栗でもなく、無花果の木が一本植わっていた
私の子供の日の記憶の中では
無花果の木に無花果の実がなる頃に
ばあちゃんが便所の近くで倒れた
まだ日の明るい内で家にはばあちゃんと私の二人だけだった
大きな物音がして同時に悲鳴がした
私は吃驚してしまった
こわごわ便所迄見に行くとばあちゃんが不自然にひっくり返って倒れていた
顔色が普通ではなくその体は痙攣を起こしていた
私はどうしていいかわからな
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