無花果の木に無花果の実がなる頃に/こたきひろし
 
らなくなったが
 泣きわめきながら家裏に飛び出すと畑で作業している両親を呼びにひたすらかけて走った

 当時電話はなかった
 地域限定の有線電話はあったが隣村の診療所迄は繋がらなかった

 どうやって医者に連絡がついたのかは記憶になかった
 周辺は隣村との分岐点近くにあったので村営の診療所が一番近かった

 医者と看護婦は一人ずつそれぞれが自転車漕いで到着した
 頃にはすっかり日が暮れていた
 ばあちゃんがすでに息を引き取った後の事だった

 無花果の木に無花果の実がなる頃
 ばあちゃんの遺体を納めた棺桶は担がれて先祖代の霊が眠る墓の土に埋められた

無花果の木に無花果の実がなる頃に
 





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