遺失の痣/ホロウ・シカエルボク
 
ったのだろう草塗れのスペースの後ろに、古民家を改装したみたいな平屋の一軒家だった、家の中心にあたる部分の屋根が陥没しかけていた、その家からどこに続く道もなかった、新しい造りなのに、とてつもなく古いもののように見えた、そして、孤独を守るためだけに建てられたようなものに見えた、玄関は開いていた、あまり広くない、二人並べばいっぱいになりそうなその玄関に、女が座ってこっちを見ていた、俺が会釈をすると、女もそうした、俺は近づいていった、女は一昔前に流行った膝までのゴツゴツしたブーツを履いて、身体をすっぽりと覆うようなグレイのコートを着ていた、そしてなぜか、雨も降っていないのに全身がほんの少し濡れていた、君の
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