過去の歌、散らばる道/ホロウ・シカエルボク
んな夏の終わる頃にだけ
狂ったように海の歌をうたうのだろう?
穏やかな春にも
縮み上がる冬にも
波はこうして砂浜をなめているのに
もう少ししたら
雨が少しだけ降るかもしれない
それはもしかしたら
雪に変わるかもしれない
川と海が交わるところ
河口大橋のあたりまで歩こうと思った
人生を
いろいろな風に迎え入れようとした時代のことを思いながら
つかむ、見つける、待つ、追いかける
だけど結局それは
滑らかに流れるべきいろいろなところを
無理やり堰き止めていたに過ぎなかった
人生はパンではない
それ相応の対価と、ともに
引き換えられるような甘いものではない
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