エデン/道草次郎
「あ、ごめん。母が夕飯だって」
そういうとぼくはやにわに立ち上がる
すると初恋の人が突然のバランス不均衡により
ガクンとなってしまう
しばらくどこか痛そうに目を瞑っているとこう言った
「ねえ、今ので奥歯の差し歯がとれた。弁償もできなそうね。さよなら。そしてお幸せに」
ぼくはしばらく夕栄に顔を満たされながらどうしていいか分からなかった
「あの女、まるで酷いじゃないか。歯の二、三本どうってことないのに。俺のたましいを踏みつけていきやがった」
また、母の声がした
「はいよー」と仕方なく答えると
すごすごと家に戻るしかない自分が
何人も何人も
ぞろぞろと別の場所から歩いてくるの
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