そして鍵の形はいつも同じではない/ホロウ・シカエルボク
 
しまうというのは、所詮悩みでもしない限り頭を使うことがないような人間にだけ相応しいフレーズだ…ところがその夜俺にはなにも考えることがなかった、四六時中何かを考えているとそういう夜はよくある、よう、少しは休ませろよと思考回路がだんまりを決め込んでしまうーだから俺は必要最小限の動作だけを残して、木のようなものになろうとして横たわっていた、表通りを走る車のエンジン音や、近所で営業しているカラオケバーの、排水溝を流れていく汚水が立てる音みたいな雑音が聞こえてこなければいけないはずだったが、そんなものはまるで聞こえてこなかった、現実的な闇ではない、と、俺は意識的に再認識をした、おかしなことなんて初めてじゃな
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