苔生した遺跡群の中の「SF(サイエンス・フィクション)」/道草次郎
 
記憶がある。

その物語に登場する惑星は、非常に地球と似ていて、いや、それはもはや地球そのものだったかも知れない。だから、リンゼイやドレス・レッシングやナボコフ、ボルヘスの夢幻世界や夢想家でない時のレムなどが築き上げた宇宙がそれに近かったのかも知れない。そんなSFを、そんな世界の構築をかつて夢にみた。その夢はけっきょく果たされぬまま終わってしまったが、夢が鮮やかな光彩を放っていた微かな記憶だけは消えることはない。

今はただ、天才というにはいささかヤンチャ過ぎた三十年代のパルプ雑誌から抜け出してきたかの如き神々たちを、遠くから礼拝して満足している。SF、それはいつでも古びた万華鏡だった。映
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