詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
分の傷の待ち伏せに向かって苦難の道を行く──
(ディラン・トマス『誕生日の詩』)

      ○

不幸は俺の神であった。
(ランボオ『地獄の季節』冒頭の詩)

世界よ、日に新たな不幸の澄んだ歌声よ。
(ランボオ『飾画』天才)

黒く、深紅の傷口よ、見事な肉と肉の間に顕われる。
(ランボオ『飾画』Being Beauteous)

転々とさまようのだ、疲れた風にのり、海にのり、傷口の上を。
(ランボオ『飾画』煩悶)

 ふと頭に思い浮かべてしまった。海を渡って詩の朗読をしてまわる人間の大きさの傷口を、砂漠の砂のうえや森の中を這いずりまわる人間の大きさの傷口を。
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