詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
ると、近所のフレスコで、おばあさんたち二人が、「ひざの調子はどう?」「雨のまえの日はひどいけど、ふだんはぼちぼち。」みたいな会話をしているのを耳にしたり、横断歩道を渡っているときに、おじいさんがゆっくりと歩いているのを目にしたときに、ぼく自身もゆっくりと歩かなければならなかったので、気がつくことができたのだった。それまでは、さっさと歩いていて、ゆっくり歩いている老人たちの歩行になど目をとめたことなどなかったのである。このとき思ったのは、ぼくのこの右足の膝の骨の奇形も、左足の膝の痛みが激しくて歩行困難になったことも、ぼくの目をひろげさせるための現象ではなかったのだろうかということであった。ぼくの目に
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