神聖なる合コンの話 (序 その一)/道草次郎
 
コミを入れた事は覚えている。

 みんな、一人につき一冊おススメの本を持ち寄って来ていた。これは、この合コンを企画したいつも派手な自転車に乗っている愉快なイベント企画者ペグミン(仮称)の提案だった。彼女は三十路の元気なママで、なぜか合コンの開催場所を古い金物屋を改装したカフェに指定してしまった。おかげで変に薄暗い気が滅入りそうな雰囲気のなか、本好きな男女の為の地味なパーティーは催されることと相なった。季節は晩秋、門前町によく似合う凩が吹き始める頃だった。

 良く言えば味のある、悪く言えばどんよりした間接照明の下、謎のワンドリンク制を強いられた男女は、たいして美味くもない柚子入りの何とかテ
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