神聖なる合コンの話 (序 その一)/道草次郎
 
好きな人ということになっていた。何を血迷ったか、ぼくがこの合コンに参加してみようと思ったのは、むろん、本ぐらいしか人と話すきっかけを持ちえない自分を拗らせていたからだ。

 女の人はほとんどが現代小説、たとえば江國香織とか小川糸とか小川洋子とか、そんな作家を好きだという人が多かったように記憶する。一方、男性参加者の傾向は様々で、ひたすら漫画の『ワンピース』の事を熱っぽく語る人もいたし、きわめて控えめに、「最近、和辻哲郎の『風土』を読みました」なんて口ごもるように話す人もいた。しかし、やはり村上春樹を愛読する人が多かったのは想定内というか、いったいどこまで浸透してるんだよ春樹さん、と内心ツッコミ
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