深夜勤務の時のこと/板谷みきょう
 

解らなくなっても
顔さえ見たら殴り倒した
途中で詰所から病室に
逃げる者も居て

静まり返っていた深夜の病棟は
患者たちが目覚めてしまい
騒然となったらしいが
気付いてなかった

…で

ふと見ると
十代半ばから薬物乱用で
警察に保護されて精神病院に
入院していた茂太君が
立っている

彼は今で言う所の
「プライマリ・ナーシング」で
ボクが一貫して
担当していた患者だった

突然怒りが込み上げて

茂太ー!! お前もかー!!

顎に一発。鉄拳制裁。

茂太君は両手で顔を抑え
しゃがみ込み
「僕は、助けに来たのにぃー」と
泣き崩れ
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