怨念の赤い糸/ただのみきや
 
ない着物姿の女が酌をしてくれる
盃は透明でわたしの不安な指先が形作っていた
女の手はことさらになめらかで
女形のように白く科をつくる
酒を注がれる度意識はフラッシュを焚かれたよう
一瞬の心神喪失を引き起こす
短い眠りの合間の夢から覚める瞬間に似ているが
夢ではないから覚めようもない
――まるで三々九度だ
まめまめしく酌をされる度
無言の落雷
脳は白熱球になり
フィラメントが焼き切れる
女は面白がっているのか止めようとしない
だがそこには何の啓示もなく むしろ
誰かの啓示のための挿絵にでもなったようで
入子状の黴臭い笑いが奥の方でカタカタ鳴るのだ
首もないのに女の笑
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