怨念の赤い糸/ただのみきや
の笑いもそれとなく膝に零れて
真っ赤な情念を散らした後の
満ち足りた諦念を醸している
一本松
呻きが樹皮を裂く
思考と情念を袷に縫い上げてゆく 娘の
白く縺れ合う蛇のような指先に懸想した
片端の翁の顔が
朝の光を陰と陽に振り分る
浮き立つものは雷を流す溝か
千年を超えて燃え上る松明よ
拷問の渦中に大気へ射精せよ
ポプラ
赤子の唇に触れる指の重さ
いま光は睫毛をみな寝かせてしまう
蜜柑ひとつ額に乗せて
ボールの疎らな心音
置き去られた影のように
建物の中を逃げ惑う鳥
老人たちの朴訥なテニス
その向こうには一本の樹が
黄色い蝶で埋め尽くされ
眩しくはためいている
脳が内から冷たく焦げてゆく
《2020年11月8日》
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