彼は十代が終わりに差し掛かる頃に/こたきひろし
な雰囲気を身に着けていた
髪の毛を伸ばしていて、それが黒く美しい
なのに
夜に酒場で見た彼女は派手な衣装に身を包んでいた
だけど持っているしなやかな肢体は何も変わらなかった
そのしなやかな肢体に引き寄せられて彼は夜の店に来てしまった
彼と彼女は立場が入れ変わっていた
昼間 彼女は彼の働く小さな洋食屋に週に何度か食べに来る客だった
来るのは決まってランチタイムが終わった後の暇な時間帯だった
小さな洋食屋は二十代半ばの主人とその雇われ人の彼と二人で切り盛りされていた
ランチタイムが終わると二人は交代で休憩に入った
暇な時間帯はほとんど店番をしているようものだった
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