眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
書き物をも求めた結果、全集が出たり、何冊も関連本や評伝が出たり、というような未来を予測していたとはけっして思えず、だから、自分がちゃんと手を入れた作品群とそれ以外を分けて認識されるかぎりにおいては、あなたの生きざまの足跡として私たちがそれを享受できることを、笑って許してくれているかもしれない。
さて、そんななか、あなたがいちばん公表してほしくなかっただろうと思う、「詩集」が出た。あなたは生涯、詩に対する批評眼が大変きびしかった。イタリア文学者として博士論文に、イタリア現代詩人ウンガレッティを選び、そもそもイタリア文学は(二十世紀後半をのぞいては)小説が育たない土壌で、イタリアは絶対に詩である、と
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