眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
とば!)、主人公の宗教的独白をぜったいに避けるのだというあなたの強い意志が見えるように思う。文学には「ものごとをぼやかして見せるあの霧」がなくてはならない、とあなたは友人に語った。
公開するつもりもなかったはずの日記やノートや私信が、あなたの死後、全集に載せられ、あるいは全集の後にも発見されたりして、公開された。いちど雑誌に載せた文章ですら出版するときになんども改稿したあなただから、発表しなかった私的な文章を公衆に読まれてしまうのは歯痒いだろうし、はずかしいだろうと思う。「あちこち書き足したり、表現を変えたかったと、故人も思っただろうに違いないのだが、時間の終わりはあんまり早く来た」と、『バスラ
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