眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
題名ではない、という立場に立ちたい。写真が冒頭に載っている7篇のうち、この「(アマンテアでは)」が他の6篇と大きく異なる点が、二点ある。一点目は、見開きにおさまらず、本では3ページに渡っていること。(おそらく)二枚の横長の紙に書かれていて、「夕星の瞳の」が一枚目の最後の行になっている。二点目は、この手稿の筆跡が少し汚く、荒れており、速く書かれているように見える、ということである。特に冒頭の三行は、やや斜めに向いており(右上から左下へかけて)、他の6篇のゆったり流れるような須賀の美しい筆跡ではない。興奮して素早くスケッチしているかのようだ。その後、筆跡は落ち着きを取り戻すように見えるが、「雪いろの/
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