眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
、主に、「これで良いのでしょうか」と問うているような気がする。須賀のまわりには、だれひとり、(少なくとも日本人は)、須賀の生き方にYesを、Ouiを、Siをいってくれるひとはいなかったに違いない。いや。数少ない親友だけは…須賀が最後の作品『遠い朝の本たち』の、最初と最後の章を捧げた「しげちゃん」は、こう言った。「だいじょうぶよ、私はあなたを信頼してる。ちょっと、ふらふらしてて心配だけど、いずれはきっとうまくいくよ、なにもかも。」この全肯定を須賀は人生で何度も思い出した。高木重子は戒律の厳しいカルメル修道会の修道女の道に進み、大学卒業後須賀と対面できたのは(須賀の作品を信じるなら)一度きりだった。手
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)