眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
いる。でも、うっとりと!


{引用=
     同情


つめたい秋の朝の
ラッシュアワーの停車場前
がつがつとパン屑をついばみ
せはしげに まばたきして うずまく
?、灰、緑の
鳩の波に
ひとり 背に 首をうづめて
うごかぬ おまへ
セピアいろの 鳩よ。

あゝ
わらっておくれ
うたっておくれ
せめて みなにまじって
わたしを安心させておくれ。

(いろがちがふからといって
 なにも おそれずとよいのだ。)

主よ 一羽の鳩のために
人間  が くるしむのは
ばかけてゐるのでせうか。

            
          
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)