眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
部屋に泊まっていたとき、屋上に上がって友人がTシャツを干すのを見た。真っ青な空に、真っ白なシャツがはためいているのを眺めていると、記憶のなかのありとあらゆる青空が色あせていき、この青空だけが記憶に残ればいいと思った。「あんな青い空の下で君が洗濯している」という俳句未満みたいなものを書いた。須賀も、パリの暗い空と比較して、イタリアの濃い青色の空の魅力についてよく書いていた。「最初に勉強に行ったのがペルージャでして」と、辻邦生との対談で語っている。「空の青さを見ただけでもう、いかれてしまったんです(笑)」
詩の形式に関する厳しい批評眼は、1960年にジェノワで出会うコルシア書店の知識人たちとの、詩を
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)