眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
かって両手をひろげ』の意味。『詩篇』143:6より。」とある。その通りに両手をひろげたうえで、須賀は「待つ」という、そこに私は動かされる。須賀は、生涯において迷い、そのときベストだと思う方向へ、須賀の言葉で言えば「あさはかに」、がむしゃらに行動した人だが、一方、「待つ」人でもあった。自分の中で言葉が、記憶が成熟するのを待ち、自分の文体が出来上がるのを待った。ここでは、神が、あるいは神が造った自然が、「ふってくる」のを待ち、それに「じっと」くちづけをする、と言う、須賀と神との間のしずかな会話がある。「すきとほった そら」はイタリアの、あの特有の抜けるような空のことだ。ずっと昔、私がローマの友人の部屋
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