トラムの話/春日線香
ある日、トラムが砂掘りに精を出していると、小さな石の扉が砂の下から現れた。ずいぶんと古びた扉だ。苦労してこじ開けると階段が下へ下へと伸びて、冷たい空気がすうすう流れている。どこへ続いているのだろう。トラムはおそるおそる地下に降りていった。トゥララ、トゥルララ。歌は壁に反響していつもよりもっと奇妙に響いた。
それきりトラムは消えてしまった。彼がいないことに最初に気づいたのはバベル屋の主人だった。もう何ヶ月も経っていて、トラムが掘っていた遺跡は砂に埋もれてわからなくなっていた。トラムの消息を尋ねても誰一人知らなかった。主人は胸騒ぎを覚えたが厄介者に気を回す余裕はなかった。人々も病気持ちの妙なやつ
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