10月31日雑記/道草次郎
 
その部分はいつの間にか朽ちてしまっているようだった。もろに風雨に晒されたことにより、ちょうどお椀型に成形がし直されたカタチとなったその部位には、直径約三十センチぐらいにわたって雨水が湛えられていた。

なぜか気になったので一旦梯子を降り、梯子の位置を山毛欅の根方近くに移す。そそくさともう一度昇ると、その小さな雨水の池を覗いてみた。そこには、いく匹かの甲虫の死骸と縁を這う蟻、腐り黒ずんだ樹皮に這う蛞蝓の数体が認められた。ちょっとした神秘のオアシスを期待した子供が自分の中にいたのだが、その子供は早々に手を頭の後ろに組みいかにも退屈そうに何処かへ行ってしまった。自分もべつに思うところもなかったの
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