10月31日雑記/道草次郎
 
数年前に根元からチェーンソーで切られたとは到底思えない程の勢力を誇示していた。植物の生命力を改めて感じるとともに、それによってしたたか苦しめられしまった人間の図が人知れず展開される。

棗(なつめ)の枝を何本か剪定して梯子から降りる時、あやまって無辜の虫を踏み潰してしまう。汗をかいた背中が一瞬ぞわっと粟立つ。ほんの少しの悔いが秋風のように胸をスっとかすめていく。

柿の実の色づきを確かめる為また梯子に登ると、たまたまそこから大樹である山毛欅(ぶな)の、地上五メートルほどに位置する太い副幹の分岐部分が見えた。かつて三又だった幹のうちの一本を切りっぱなしにしておいたせいで、その
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