鏡の仮面劇/ただのみきや
 





秋の花火

長い導火線を燃やし切り
たどり着いたのだ
あたかも偶然のよう
破裂する 瞬間を 悟られず
――澄み切った衝撃
ゆっくりゆっくり大気に膨れ上り
静寂を開花させる
千々に乱れ飛ぶ 命は
真昼の光と抱き合って
しめやかに明滅し
曖昧なまま何時までも
払い除けることのできない
遠景 つめたい火の粉





大太郎法師

意味や法則が隠されている時
片言が片言の脚を掴む
存在しない遺言が判じ絵じみて来る前に
片言が片言の脚を掴む
踏み抜いて脱力し空白の汀に達するまで
片言が片言の脚を掴む

足跡を振り返り
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