詩と詩文(秋の感慨)/道草次郎
か、とも思う。好き好きか。
本の思い出はじつは豊富だ。つまり、その本を得た時の思い出、である。このアランの小冊子『四季をめぐる51のプロポ 』を手にしたのは、まだ自動車免許を有していなかった二十五歳ぐらいの頃だ。猛吹雪のなか自転車で二つの大きな吊り橋を越え、隣接する市にあった比較的大規模の書店で買い求めたものである。あの日のことはよく覚えている。あまりの寒さに手袋の中で手を握りしめていた。そして、まだ熟さない詩への熱情を内に秘めていた時期で、自転車を漕ぎながら何千何万のついに書かれることの無かった叙事詩に新たな一ページを刻んだ。内向的に内向的にどこまでも。しかし、身体は、内側からはげしく熱
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)