恋人と爆弾/ただのみきや
 
逆説的

ルイス・キャロルが実在のアリスを愛し物語を捧げたように
わたしも捧げたかった

わたしも溺れたかった
ボードレールがジャンヌ・デュバルの肉体に溺れたように

高村光太郎が千恵子を詠ったように
失くしたものを嘆いて詠いたかった

北村透谷が石坂ミナへ書き送ったみたいに
暮らしで萎れるようなものを大仰に称えることはせず

バイロンのように次々対象を変える訳でもなく

ディキンソンのように内に秘め
言葉のアイコンへと熟成するまで黙々と

しかしわたしは詩人ではなく
誰に恋することもなかった
故にいつまでも詩を書いて
居もしない恋人を探しさまよっ
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