安置室の話など/道草次郎
 
を見るような目をしていた。たしか、その人がフランスによく行くとかそんな話をちらっと他の親戚の誰かに話していた時だ。ぼくはどうしても居た堪れなくなり、唐突に大して知りもしないルネ・シャールのことを幾つか口走った記憶がある。するとその人は「ルネ・シャールとはまた渋い」だったか、そんなことを言った。

広島から来た叔母がそんなやり取りをすこし冷めた眼で見ているような気がしたぼくは、それきりで詩の話を打ち切ってしまった。

帰り際にその人から自身の新しい詩集と、『ガニメデ』という詩の雑誌を手渡された。たしかメールアドレスも貰ったような気もするが、もう随分昔のことなので忘れてしまった。

詩集は
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