北村太郎(その詩と死)/岡部淳太郎
、詩全体が隠喩になっているからだろう。ひとつひとつの言葉で隠喩を語る作風から、詩全体で隠喩を語る作風へのシフトチェンジ。この作風はよっぽど詩人の肌に合ったのか、これ以降、詩人はこうした傾向の詩を量産していくようになる。
ねむることによって毎日死を経験しているのに
不眠症にかかるなんて
何と非人間的な苦しみだろう
毎日死を経験しないために
ほんとうに死にたいと思うのは
ごく自然ななりゆきだが
でも
死なないでくれきみがひとつかみの骨になるなんて
(「ハーフ・アンド・ハーフ」第一連)
{引用=詩はことばの病(やまい)、とつぶやきながら
傘をさして銭
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